2002年、ジープを買うことにした。ジープを売っている業者はたいてい大通り沿いにショールームを構えており、大型・新型ジープにおいて、有名な大手は「Doris」「Hilton」「Aztek」等だ。しかし、いくらショールームをまわってもエンジンとボディの品質がよく、値段も納得いく車が見つからなかったため、街で走っている優れたジープのメーカーをメモることした。数日間の調査でTSC(もと「Tabunok Surplus」)が卓越した業者であることが分かった。上がその工場の入り口だ。
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最初に訪れたとき、2車体から選べるといわれ、入念にチェックした。どちらもエルフの中古車で、足回りなどに大きな違いはなかった。結局、キャブの内装が痛んでいない方を選んだ。営業許可証込みで値段は40万ペソ。安いジープなら12万ペソくらいで購入できるが、上質の最新型・大型ジープで40万はそう高くないと判断した。その日に15万ペソの内金を払った。
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作業員は工場の従業員ではない。ボディ、塗装、エンジン、電気等、それぞれ下請け業者が固定額で請け負う(「パッキャオ」というシステムだ)。その結果、作業は凄まじいスピードで進む。数日後、工場に行ったとき、ボディはすでに出来上がっていた。デザインはどうなってるか、オーナーの Chaw 氏に決断を急かされた。私は焦った。
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この時点でのキャブの内部。右ハンドルから左ハンドルへの変換はすでに完了していた。セブ島じゃ当たり前だが、よくもまあハンドルなんか移動できるよなぁ〜。
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客席となる後部の様子。チルトしないトラックの場合、この部分の床を開けてエンジンをメンテすることになるため、多少高くてもチルトする車種にこだわった。
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エンジンが外されたジープを、ボディ部から塗装部へと移動させる。[拡大] 後ろに工場のオーナーのパジェロが見えるけど、荷物の場所がないくらいスピーカーを積み込んでいるサウンド愛好家だ。
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慎重にエンジンの音を聞く熟練工。エンジンはジープの心臓。ちゃんとしたエンジンを付けてもらうため、彼に数千ペソプレゼントした。その結果かどうかわからないが、煙がまったく出ない新品同様のすばらしいエンジンをいただいた。
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結局、トヨタF1チームをモチーフにしたデザインに決めた。当時、トヨタチームはF1に参戦したばかりで、ほかにトヨタデザインを使ったジープが走っていなかった。また、フェラーリ、ウイリアムズ、ホンダ等と異なって、タバコ会社の広告が含まれていないことも気に入った。まさか、ビリやブービーが数年も続くと思わなかった。
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デザインのロゴを車体に移転する方法は、カッティングシートでもなければ、ステッカーでもない。なんと、チーフデザイナーの Ken が、左手で私が持参したロゴを持ちながら、右手でサッサッサと鉛筆でテープにスケッチしていく、という作法だ。結果はこの通り。
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いい感じに出来上がってきていますね。ロゴの配置は Ken に任せたが、黒、赤、白のバックの位置関係は私が決めた。
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切り取った部分を塗装するため、新聞紙を貼り付ける。
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いつのまにか座席とスピーカーが装備されていた。スピーカーシステムは別の業者に2万5千ペソで委託した。ジープは本来、ステレオ禁止だが、ステレオを搭載しているジープは人気度が高い。交通管理官に止められると、運転手は慌ててステレオを外し、リュック等に隠す。
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最後の仕上げ。宗教的な文句を入れたい運転手の要望を却下して、マッドガードにTSC社の名称を入れてやった。よく頑張ってくれたし、終始、優れた業者であると受け止めた。
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受け渡しの寸前まで、電気屋がライトを調整していた。夜、ジープは派手な光を放ち、動く花火のように都会をさまよう。なーんてね。
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できあがり。この後すぐに自宅まで運転した。右ハンからの変換の影響で、ローギアは右側に残っていた。慣れるまで多少苦労した。なお、運転手ともめたため、このジープは残念ながら1週間だけ運営してから他人に売却したが、今でも街を走っているようだ。
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フィリピン、特にセブ島では、日本の中古車の右ハンドルから左ハンドルへの変換が普通に行われている。軽トラならそのコストはわずか1万ペソか、それ以下。フィリピン共和国の国家法律で、右ハンドルの輸入、販売、運営は禁止されているが、バラバラにされたトラックは部品名目で大量に輸入される。軽トラやトラックだけではない。パジェロ、サーフ、テラノ、ビッグホーン等も変換される。もともと左ハンの車より、数十万ペソ安い。右ハンドルの車両は危険なため使用が禁止されていると言われているが、変換された車を使う方がよっぽど危険だと思いませんか?また、「surplus」と呼ばれる変換車はしょっちゅう壊れるケースが多い。フィリピン政府もくだらない法律をつくったもんだ。
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これからもとに戻される軽トラたち
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