セブ島はマンゴーの産地として有名で、栽培の詳細を別の記事で紹介した。なお、果実を鳥などから守るため、紙で包むが、これもよく知られている。このように、まるで「封筒の木」に成り変るマンゴーの木をセブ島のあちこちでよく見かける。
|
さて果実を包む封筒に使われる古紙だが、当然、セブ市の日刊紙などの古新聞が使われると思うのが普通だが、実はセブ島の新聞社どころか、フィリピンの新聞の古紙も使われない。圧倒的に目立つのは、中近東の新聞だ。ごらんとおり、アラビア語が綴ってある。確かに、フィリピンには回教徒はいることはいるし、彼らは日常はアラビア語を使わなくても、アラビア語の聖書等を所持したりする。しかしアラビア語の日刊紙はなく、そもそもフィリピンの回教徒はスル島などミンダナオ地方に住んでおり、セブ島に回教徒はほとんどいない。
|
不思議なので、封筒に使われる古紙を調査することにした。なお、激しい雨が降ると、多くの包み用紙が流されて地面に落ちるが、昨夜の雨で流されたと思われる英字新聞を発見。拾って広げてみると、オマーンの英字新聞「Oman Tribune」だった。日付は2005年6月1日、数ヶ月前のものだ。
|
しばらくして、アラビア語新聞「アル・シャビバ」の一面を発見。広げるとドメイン名が掲載されていたので、インターネットで調べてみると、やはりオマーンの日刊紙とわかった。古紙は間違いなく中近東から来ている。ということは、中近東で古紙を大量に買い入れて、フィリピンに輸入している業者がいるということか。サウジアラビアやドバイなど、中近東に出稼ぎに出ているフィリピン人が何十万人もいるので、そのようなコネクションが成り立つのもそう不思議ではない。
|
ところが、漢字のスポーツ新聞も発見した。数ヶ月前の、香港の日刊紙だ。セブ島に多くの華僑がいるので、中国とセブ島を繋ぐ何らかのコネクションはありえるが、華僑は出稼ぎに行かない。そして、セブ島の華僑は香港とは言葉も違う福建省から来ている。いったい、中近東と中国の古紙はどういうルートでセブ島にきているのか。
|
いよいよ不思議、ホノルルの日刊紙「Honolulu Advertiser」を発見。中近東と中国と同様、ハワイとセブ島の絆は深い。日系人とならんでハワイにはフィリピン人系の移民が多く、以前のハワイ州の知事カエタノ氏もセブ系の移民だったとか。しかし、やはり、中近東と中国とハワイを結ぶネットワークの正体は不明だ。物流の観点からして、アメリカ本国はともかく、ハワイからセブ島へのルートは存在しない。コンテナ船の直行便がないため、どこかで積み替えているたと思われるが、たかが果実を包む古紙のためにそこまでする必要があるのか。理解できない。
|
やがて、インドの新聞を発見した。何らかの関係をもとに古紙の輸入ルートが成り立ったという説もついに崩壊。セブ島にはインド人は少なく、インド料理店も「マハラジャ」の1軒に過ぎない。いったい、なぜ世界中の古紙がセブ島に来ているのか。どういう系統でセブ島に来ているのか。そもそも新聞社を3社もほこるセブ市がなぜ、わざわざ世界のあちこちから古紙を輸入しているのか。まして、1日あたり50ペソ(100円)程度で暮らしている山岳地帯の人々が、なぜコストの高い、はるばる海を渡ってきた外国の古紙を使っているのか。なぞは深まるばかりだ。
|
|
|
|
フィリピンのマンゴーは有名で、なかでもセブ島のマンゴー、特にタランバンの山々で育つマンゴーは大きくて甘いそうだ。栽培の詳細は別の記事で紹介したが、こちらのページではちょっと不思議な現象を「番外編」として取り上げた。
|
|
|